Citi Ventures into Private Stock Tokenization — Issues Depositary Receipts on SIX Blockchain Infrastructure
ポイント
- 米金融大手シティグループが、非上場株式をトークン化した「預託証券」の発行・運用サービスをローンチ
- インフラにはスイス証券取引所グループSIXが運営する規制準拠のブロックチェーン基盤を採用
- 従来は流動性が低く機関投資家でも扱いにくかった非上場株に、トークン化によって新たなアクセス経路が生まれる
- TradFi(伝統金融)とRWA(実資産トークン化)の融合が、大手銀行主導で本格化しつつある
シティグループが非上場株式をブロックチェーン上でトークン化し、預託証券として発行・流通させる仕組みを稼働させた。規制準拠のインフラを敷くSIXとの連携で、制度的な裏付けを持たせた点が従来の実証実験とは一線を画す。
伝統金融が「RWAトークン化」に本腰を入れてきた背景
非上場株はこれまで、流動性の低さと情報の非対称性が大きな障壁だった。PEファンドやVCが保有する未公開株式は、売りたい側と買いたい側をマッチングするだけでも膨大なコストと時間がかかる。セカンダリー市場が存在するとはいえ、個人投資家はおろか中堅機関でも参入のハードルは高かった。
ここにトークン化という技術を持ち込む動きは、2023年ごろからBNYメロンやJPモルガンの「Onyx」など複数の大手金融機関が模索していた。ただ多くは概念実証(PoC)や限定的な社内実験にとどまり、実運用に踏み込んだ事例は限られていた。
シティの今回の取り組みは、SIXが提供する規制対応済みのブロックチェーンインフラを活用している点で実用性が高い。SIXはスイスの証券インフラを担うグループであり、その基盤上で動くサービスは当初からコンプライアンスフレームワークに組み込まれている。「実験」ではなく「商用サービス」として設計されているということだ。
RWA(Real World Assets)市場全体で見ると、DeFiプロトコル上でのトークン化国債や社債は2024年から急速に拡大し、2025年には残高が数百億ドル規模に達したとする集計も複数出ている。その流れの中で、より流動性が低く価値が不透明だった非上場株にまで射程を広げてきたのが今回の動きと捉えられる。
市場への含意——投資家が見ておくべき3つの視点
1. 非上場株の流動性革命が始まるか
トークン化によって非上場株が24時間取引可能な資産に近づく可能性はある。ただし現時点では参加できる投資家層は適格機関投資家に限定される見通しで、すぐに個人が自由に売買できる世界にはならない。流動性プレミアムが縮小する方向の変化として中長期で注視すべきだ。
2. カストディ・決済事業でのシティの競争優位
トークン化資産のカストディや決済は、ブロックチェーンネイティブな企業とTradFi大手が激しく競合する領域だ。シティが独自ではなくSIXのインフラに乗る形を選んだことで、スピードを優先した印象がある。競合他社も同様のサービスを急ぐ可能性が高く、業界全体でトークン化インフラへの投資が加速しそうだ。
3. RWA関連トークンへの影響
Ondo FinanceやMatrixdockなど、RWAのトークン化をテーマとするプロジェクトにとっては追い風とも向かい風とも読める。大手金融機関が自前で囲い込む動きが強まれば、独立系プロトコルへの資金流入が鈍化するシナリオも考えられる。筆者は、あくまで「市場全体の認知度向上→独立系への資金流入」という正の連鎖も同時に起きると見ているが、どちらが優位に働くかは今後の規制整備次第だ。
まとめ
シティグループがSIXのブロックチェーン基盤を使って非上場株のトークン化預託証券を商用化した。TradFiの中核プレイヤーがRWAの実用フェーズに明確に踏み込んできたことで、業界の議論は「可能かどうか」から「誰が市場を制するか」に移りつつある。非上場株の流動化という長年の課題に対して、テクノロジーと規制の両面でようやく現実解が見えてきた局面と言える。
よくある質問
Q1. トークン化預託証券とは何か?意味と仕組みを教えてください
トークン化預託証券とは、株式などの有価証券を原資産として、その権利をブロックチェーン上のトークンとして表章したデジタル証券の一種。従来の預託証券(DR)が特定の市場で外国株を取引可能にする仕組みと同様に、原資産の保管を専門機関が担いつつ、トークンという形で権利を流通させる。スマートコントラクトを活用することで決済の自動化や保有者管理の効率化が期待できる。
Q2. シティがSIXを選んだ理由はどこにあるのか?
SIXはスイスの金融規制当局の監督下にある証券インフラグループで、そのブロックチェーン基盤は当初から法的・制度的なコンプライアンス要件を組み込んで設計されている。シティとしては独自チェーンを一から構築するよりも、規制対応済みのインフラを活用することで市場投入までの時間を短縮できる。実証実験を脱して商用サービスとして展開するうえで、この「規制との整合性」がインフラ選定の最大の理由だったと考えられる。
出典: CoinPost(2026年6月11日公開)
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