米国「クラリティ法案」年内成立へ——業界団体TDCが議会ロビー活動を本格化
ポイント
- 米国の暗号資産擁護団体「The Digital Chamber(TDC)」が、2025年内を目標にクラリティ法案(Clarity Act)の議会通過を目指し、ロビー活動を強化
- クラリティ法案は米国の暗号資産市場を包括的に規制する枠組みを定めるもので、SECとCFTCの管轄権争いに決着をつける可能性がある
- 法案成立が実現すれば、米国内の機関投資家参入障壁が大幅に低下し、市場の流動性拡大につながるとみられる
- バイデン政権期の規制強化路線から転換した現在の政治環境が、業界側にとって追い風となっている
米国の主要暗号資産ロビー団体であるThe Digital Chamber(TDC)が、包括的な暗号資産規制法「クラリティ法案」の年内成立に向け、議会への働きかけを一段と強めている。法的グレーゾーンを解消する立法措置として、業界全体が注目する動きだ。
なぜ今、この法案なのか
米国の暗号資産規制を語る上で避けられないのが、SECとCFTC(商品先物取引委員会)の「縄張り争い」だ。ビットコインはコモディティ、イーサリアムはどちらかグレー、その他のトークンは証券かもしれない——こうした曖昧な状態が何年も続いてきた。
クラリティ法案はその名の通り、どの暗号資産がどの規制当局の管轄に置かれるかを明文化しようとするものだ。ゲンスラー前SEC委員長時代に「エンフォースメントによる規制(regulation by enforcement)」と揶揄された手法——つまり訴訟を通じてルールを作るやり方——に業界が辟易していたことは周知の事実。その反動として、トランプ政権下で規制の明確化を求める声は一気に高まった。
TDCはもともとビットコイン・スポットETFの実現に向けたロビー活動でも知られる団体で、政策実現力という点では業界内でも評価が高い。今回の動きは単なる声明にとどまらず、議員への直接的な働きかけを含むとされる。
市場への含意
法案の行方は、短期的な価格変動よりも中長期の市場構造に影響する話だ。ただ、以下の点は投資家・トレーダーとして押さえておきたい。
機関資金の動きが変わる可能性がある。 米国の大手金融機関や年金基金が暗号資産への直接投資を躊躇してきた理由の一つが、規制リスクの不透明さだ。クラリティ法案が成立し法的枠組みが確立されれば、コンプライアンス上の障壁が下がる。資金流入の規模が変わりうる。
アルトコイン市場への影響は複雑だ。 証券性の有無が明確に区分されることで、証券と認定されたトークンは登録義務や開示規制の対象となる。玉石混交の現状が整理される一方、対応コストが上がるプロジェクトも出てくる。ポジティブとネガティブが混在する。
ステーブルコイン法案との連動にも注目すべきだ。 現在、米議会ではクラリティ法案と並行してステーブルコイン規制法案(GENIUS法案など)も審議が進んでいる。複数の法案が同時進行する中で、どれが先に通るかによって市場へのインパクトの順序も変わる。筆者は、ステーブルコイン法案の方が先に動く可能性が高いとみているが、TDCの今回の行動はクラリティ法案を「同列の優先課題」として位置づけさせようとする意図が透ける。
年内成立という目標は決して楽観的すぎる設定ではない。ただ、米議会の立法プロセスは常に想定外の遅延が起きる。法案テキストの細部での折衝や、政治的な優先順位の変化によって、スケジュールは簡単にずれ込む。
まとめ
TDCによるクラリティ法案の推進は、米国の暗号資産市場が「規制の真空地帯」を抜け出すための重要なステップだ。法案が通れば、機関投資家の参入環境が整い、市場の成熟度は一段上がる。一方で、証券性の認定を受けるトークンには新たな規制コストが生じるという現実もある。
2025年内という期限をTDC自身が設定したことで、議会へのプレッシャーは確実に高まった。この動向は、短期の板読みより長期の市場構造を考えるポジションで持っておきたい情報だ。
よくある質問
Q1. クラリティ法案(Clarity Act)とは何か?
クラリティ法案は、米国の暗号資産に対する規制権限をSECとCFTCのどちらが持つかを法律で明確化することを目的とした包括的立法だ。現状では同じトークンに対して両規制当局がそれぞれ異なる解釈を示すケースがあり、事業者や投資家が法的リスクを計算しにくい状況が続いている。この法案はその曖昧さを解消し、米国内での暗号資産ビジネスの予見可能性を高めることを狙っている。
Q2. The Digital Chamber(TDC)はどんな団体で、過去に実績はあるのか?
TDCは米国を拠点とする暗号資産業界の政策提言団体で、2014年創設と業界内では比較的歴史が長い。ビットコイン・スポットETFの承認実現に向けたロビー活動に深く関わったとされており、SECや議会への働きかけにおいて一定の政策実現力を持つと評価されている。今回のクラリティ法案推進も、単なるパブリックコメントにとどまらない実務的な議会工作を含んでいるとみられる。
出典:CoinDesk JAPAN / NADA NEWS(2025年5月28日報道)